alone in the mansion。
つくづく寂しがりやなんだなぁと思う。
彼女も、僕も。
昨日、久しぶりに彼女から電話が来た。
どこかで飲んだ帰り道だったらしく、寒い、眠いと言いながら歩いている。
こんな寒い日には、二人で決まって行く店があった。
おいしいホットラム酒を出す店。
なんとなく、そこに行きたいのかなって思った。
僕は既に部屋でぬくぬくしていたんだけど、行こうかって誘ってみた。
彼女は「寒くて待てないから早く来てください!5分以内ですよ!」なんてツンデレっぷりを発揮していたけど、僕はちゃんとわかってる。
僕ならどんなわがままも許してくれるって思ってること。
親しくない人にはお世辞も言うしイジワルなこともしない。
僕にだけはそんな態度を取る。
それが親しみの裏返しだって、ちゃんと知ってる。
心を許した人にしか、彼女はそんな自分を見せられないから。
みんなの前では、お姫様でいなければいけないから。
息を切らせてお店に着くと、彼女は入り口の前にいた。
店は混んでいて、席が空くまで5分ほど待った。
その間、彼女は手が冷たいと言って僕の首筋に手のひらを添えてニコニコしていた。
甘くて暖かいホットラムを飲んでいると、彼女はすぐに赤くなってしまった。
だいぶ酔いが回っているみたい。
この日は早々に店を出て、彼女を抱き寄せながらマンションまで送った。
酔っているせいか、エントランスでの彼女はいつにも増して甘えん坊だった。
僕の手のひらに頬を押し当て、にゃーにゃー鳴いている彼女。
僕の胸に鼻を押し当て、もぞもぞしている彼女。
髪を撫でられながら、うれしそうな顔で微笑んでいる彼女。
愛おしくて、つい抱きしめてしまう。
このとき、旦那はまだ部屋に帰っていなかった。
彼女は、誰もいない部屋に帰るのが苦手だ。
いつ旦那が帰ってくるか気が気でない僕は、ひとしきり彼女のやわらかい頬を楽しんだところでマンションの中に促した。
満面の笑みで僕を送ってくれたあと、2分も歩かないうちに電話が来た。
ちゃんと部屋まで上がりました。今日は寒いから気をつけて帰ってくださいね、と。
僕は嬉しくてにやにやしていた。
すると、彼女が突然小声になって、
「帰ってきた!帰ってきた!」
と言った。
後ろからただいまーという声が聞こえる。
やけに良いタイミングで帰ってきたのが気になったけど、彼女が急に小声になって電話を切ったのが嬉しくて、僕はまたにやにやしてしまった。
彼女は僕を浮気相手だなんて思ってない。
単に仲のいい友達だって思おうとしている。
だから、小声になったのが意外だった。
ちょっと前だったら、当たり前のように「それじゃおやすみなさい」なんて台詞とともに電話を切られていただろう。
でも今回は、旦那にばれたくないって思ったんだ。
この間のことで、もしかしたら旦那に何か言われたのかもしれないけど、ちょっとでも罪悪感を持っていてくれるのが嬉しかった。
それはつまり、ただの友達じゃないって証明だから。