君の名を呼び、果てる。

またか、とも思うけど。
喧嘩というか、言い争いをしてしまった。
彼女には苦手な男友達が一人いる。
僕は彼のことを案外気に入っていて、つい彼の擁護をしてしまう。
そこまで好きな友達か、と言われるとなんとも言えないんだけど・・・周りが否定するから尚更に庇ってしまうのだろう。
彼の女性関係の話で彼女から否定的な言葉が出てきたときも、ついつい反論してしまった。
おかげでお互い取り返しがつかないほどヒートアップしてしまって、下手したらもう二度と会うこともないんじゃないか、というくらいの勢い。
とはいえ、僕はそんな彼女をずっと見つめてきたわけで、ある程度は心得ているつもり。
ここは僕にも非があるなと言うところでグっと引いた。
すると、彼女の炎のような怒りもすーっと冷めたみたい。
そこからは割りと冷静に、お互いの反省も含めてあーでもないこーでもないとしばし語らう。
しかしこの時点ですでに午前3時・・・。
平日の夜中に道端で何やってるんだろ、なんて笑いあって、その日は別れた。

翌日、案の定長々とお詫びメールが来ていて、なんだかより一層絆が深まったような気がした。

僕は怒った彼女の凛々しい顔も好きだ。
この喧嘩のあとの週末、別れ際に身体を擦り寄らせてきた、甘えん坊の素顔も好きだ。

ストーカー殺人事件のニュースを見た後。
私がいつか子どもを産んで、あなたに会う機会が減ったら、きっとあなたは私を刺し殺すと思うの。
僕に抱きしめられながらそんなことを言うところも、弱弱しくて大好きだ。

一緒に入ったカフェで一生懸命メニューを睨んでいる君の顔を見ていた僕は、ずっとニヤニヤしていて、気づかれなければいいなって思いながらも頬が緩みっぱなしだった。

今夜は会えるかな。