秋の空の雲の上の。

前回も書いたが、彼女から飲みの誘いなどはほとんど無くなった。

なんとも難しいところだけど…それでも一度は肌を許した、という事実だけは残っているので、彼女に近づいてくる他の男よりは遥かに近い位置にいる。

例えば、飲んだ帰りに彼女をマンションの前まで送り届けられるのは僕だけだったし、頭を撫でるのも柔らかい頬に触れるのも、誰にも内緒の僕だけの特権だった。
…もちろん、旦那以外では。

それだけのことをしている割に、信頼関係は以前ほど強くないという印象があった。
それでも好きだったから、ことあるごとに二人になろうとした。
辛抱強く好きな気持ちを態度で示した。
彼女はモテるから、飲んだ帰りに送って行こうとする男は多い。
それをかいくぐり、チャンスをものにできる機会は少なかった。
その数少ない時間を大切にして、ゆっくり距離を縮めていった。
出会ったころのように、ゆっくりゆっくり近づいていった。

昨日、僕の部屋でボードゲームで遊んだ。
みんなが集まったところで、彼女の誕生日を祝った。
有名なケーキ屋で誕生日ケーキを買い、プレゼントにちょっと高いお酒を贈った。
ゲームが終わり、みんなで居酒屋に行き、酔った彼女を気遣って二人だけで先に抜け出した。

マンション前まで行き、頭を撫でると、顔を胸に預けてきた。
頬にキスをして、耳元で大好きだよと囁いた。
彼女はもじもじと顔を押し付けたあと、僕の顔を見上げて満面の笑みを浮かべた。

まるで去年までと同じように。


夏が過ぎ、真夏の暑さが消え、ようやく綺麗な秋の空が広がった。
あのふわふわしたまっ白い雲の上に何があるのか、僕にはわからない。

冬までもう少し。

このままでいいのかという焦りと、気持は変えられないという諦めと。

悩みは尽きない。

刻は流れた。

以前の記事から既に9ヵ月が過ぎた。

僕たちの関係は、大きく変化した。

クリスマス前、彼女は大きなイベントを控えて大忙しだった。

その分、会える時間は減った。

僕は仕方ないと諦めて、クリスマスが終わったあとの時間を楽しみにしていた。

ところが、クリスマスから旦那が帰ってきてしまい、お正月明けまで居座っていた。

…いや、彼の家なのだから当然ではあるけど。

結局休み中は二人きりで会う時間は一瞬しかなかった。


そのフラストレーションがたまってしまったせいもあって、休み明け、彼女とケンカをしてしまった。

彼女は泣くほど怒り、僕の信用はガタ落ちした。

それでも関係は続いていた。

以前よりキスの回数も増えていた。

このままズルズルと続くのかと思っていた。

そして3月。

旦那が4月から帰ってくるという話を人づてに聞かされた。

僕は身を引こうと決めて、もう会わないと告げた。



泣かれた。



 あなたは何が目的だったの?
 友達じゃなかったの?
 私と付き合おうと思っていたの?
 私が彼と離婚すると思っていたの?
 私が何か勘違いをさせてしまったの?



何度も話し合った。


旦那と一緒にいる彼女を、平気な顔で見つめることはできそうもない。

最後に強く抱き締めて、友達としてがんばってみる、と言った。

彼女は、納得はしなかったけど、なんとか笑顔でまたねと言ってくれた。



…だけど、がんばれなかった。

自分で彼女を遠ざけておいて、また自分から戻っていってしまった。

だけど、旦那との時間が増え、新しい友達も増え、僕といる時間はほとんどなくなった。

そんな彼女に、僕は嫌味を言った。

結果、信頼感はなくなり、友達として会える時間すら、積極的に作ってくれることはなくなってしまった。


このまま終わるのかと思った。


無理だった。


どうしても好きだったから。


二人きりで飲みに行く機会を2回作って、話し合った。

また泣かれてしまったけど、わだかまりだけは消えたようだった。

最後には頬にキスしておやすみと言った。


だけど、今でも積極的なお誘いの連絡はない。

一度失くした信頼は、そうそう取り戻せるものじゃない。

それに、彼女の部屋には旦那がいる。


つまり、去年のような関係に戻ることは、もうないんだ。


早く区切りをつけなきゃいけない。

はざま。

いろんなものの間(はざま)にいる。
彼女も、僕も。

彼女は今、A君からの間断ないアタックと僕からのはばかりのないアタックの間にいる。
A君との友情も僕の愛も捨てがたいのだろう。
それに加えて、旦那からの思いもある。
だからこそ、A君からの攻撃はあくまでも友情だと思いこもうとしている。
それは、似ているようで違う。
A君は、友情に見せかけた愛情で攻撃を繰り返している。

ゆうべ話していて、彼女はそのことに気付いているんだろうな、と感じた。
気付いていながらも今の状況を維持しているのだから、まだマシなのかもしれないけど。


僕は今、彼女の思いと自分自身の心の間にいる。
彼女の行動はわかりやすく、でも真意は測れない。

昨夜のツィートも意図がわからなかった。
なぜ、誰に向けて呟いたのだろう。
あの状況であれば、僕と一緒にいることが友人に伝わってしまったはずだ。
友人に伝わるリスクよりも、A君に伝えることを目的としていたとしか思えない。
じゃあなぜ伝える必要があったのか。

私はあなたとだけじゃなく、この人とも食事に行くのよ。
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好意的に見れば、そういうことかもしれない。
そうすることで、A君への牽制になる。


盲目的に相手を慕っていた時期は終わり、色々な思惑が重なるようになってきたようだ。
この辺りの分析は、いずれ僕に返ってくるだろう。
「あなたは一番じゃない、二番なんだ」と思い知らされる日が近いうちに来ると思う。

そのときにショックを受けないよう、心の準備をしておこう。

スラップスティック1111。

ゆうべは彼女のバンドが初めてのスタジオ練習だってことで、ちょっと覗いてきた。
一人知らないメンバー(助っ人)がいるはずだったけど、仕事が終わらず間に合わなかったそうだ。

前日の電話でちょっとやりすぎたかなぁと思っていたので、彼女がどんな顔で来るかビクビクしていた。
スタジオ前で待ち合わせにやってきた彼女は、あ、お疲れさまです、なんて伏し目がちに言うくらいで、かなりヨソヨソしかった・・・と思ったら、入り口まで数メートル歩いている間に元通りになっていた。
・・・あぁ、目が悪いから僕が誰だかわからなかったのか。
本気で避けられたのかと思って、一瞬だが凹んだ。

練習が終わって軽く飲んで、彼女はメンバーの一人と部屋が近いので一緒に帰っていったけど、その人と別れた直後にはもう僕の携帯に着信があった。
何か話したいことがあった感じでもなく、ただ声が聞きたかっただけみたい。

避けられてるどころか、もしかしたらさらに近づいたのかもしれない。
今までにないタイプの女の子なので、こっちとしても驚かされることが多くて楽しい。
その分ヤキモキ感もすごいけど。

彼女はクリスマス前まで相当忙しいはずなので、それが終わってからどうなるのかが、色々なことの分れ目になるかもしれない。

クリスマスまであと一ヶ月、しずかに暮らそう。

車輪の中。

結局、先日メール返信がなかったのは気付かなかったからだそうだ。


ただ、その日は夜中までA君と一緒にいたみたい。
A君はもう落ち着いているし、自分もA君をいい友達だと思っているから問題ない、と言ってはいる。
確かに、A君はA君で自分なりに納得しよう(諦めよう)と努力している節がある。
でも・・・彼女は自分で自分の気持ちに気付かないのだろうか?


他の人と一緒のときは、僕以外の友達にも○○君と一緒にいたって言うし、会ってる間にメールも返ってくる。
ところがA君と一緒にいることは他の人に言ったことが無いし、一緒にいる間は携帯も見ない。
彼女自身、A君のことを特別視していることに全く気付いていないみたいだ。


旦那が月に2回くらいのペースで帰ってきてるって書いたけど、そう考えたら僕の方が一緒にいる時間は長いと思う。もちろんA君よりも。
それでも、A君に時間を取られることが不満だと言ってみた。


ちょっと距離を置こうかな、なんて思いながら、全然実践できなかった。
できる自信すらなかった。
自分でも空回りしてるなぁと思う。


なんとかしないと。

光点。

わかってはいた。


僕は今、彼女に依存して生きている。
一回でも多く、一分でも長く彼女と一緒にいたくて、会える口実を探してる。
距離を置こう、なんて言えるはずもないし、実行できるわけもない。
そんなこと、出来るなら最初からやってる。


ゆうべ送ったメールに、彼女からの返事は無かった。
どこで何をしているのか、考え始めたらキリがない。
すぐに部屋に帰って寝てしまったけど、イヤな夢をたくさん見た。


真っ暗闇の中、せっかく見つけた小さな星すらなくしてしまいそうだ。


まだ彼女と知り合ってわずか4ヶ月。
こんな関係になってからは2ヶ月だ。
お互い見えてないことが一杯あるんだろうな。


もう少しよく見てみるのもいいか。
彼女のことも、自分のことも。


落ち着け自分。

アエナイチカラ。

最近会えない日が多くなってきてる。
会えない日にはほぼ必ずオヤスミ電話が来るので、それはそれで嬉しいんだけど。

結局のところ、『好き』って台詞を聞いたのは最初のあの日だけだし、エッチどころかキスだってまともに出来ない。
当たり前だけど、付き合うとか付き合わないとかいう関係でもないし。
彼女が今の関係をどう捉えているのか、全くわからないままだったことに改めて気付いた。

ちょっと会えないってだけで、これだけ色々考えられるってのもすごいな。
そんなに好きなのかと思うと、自分でも驚きだ。
今までこんなに人を好きだと思ったことはなかったかもしれない。
無いものねだりなんだろうか。


ただ・・・正直なところ、少し距離を置こうかなと思っている。
そうなったら恐らく、僕の後釜にはA君が収まるんだろうけど。

彼女が今欲しているのは、旦那がいない間の支えだと思う。
誰でもいいとは言わないけど、支えてくれそうな人を探しているのは事実だろう。

距離を取ったところで彼女がどう動くのかはわからないけど、お互いのためにその方がいいんじゃないかと思い始めている。